2014年6月11日水曜日

Kenwood TS-590、TS-990からのLinear Amplifier制御

Kenwoodのexciters、TS-590やTS-990からlinear amplifiersをstand-by制御するには2通りの方法があります。

TS-990のREMOTE connectorの端子配列は次のようになっています。(TS-990徹底解説集より)

機械式relayを使う方法

REMOTE connectorのpin 2,4,5がexciter内部の機械式relayに繋がっており、送信時にMKE(pin 4)がCOM(pin 2)に接続されるので、これをlinear amplifierのSEND(TX GND)等に接続します。

この方法は接続が単純ですが、欠点は機械式relay音が五月蠅い事です。またこの端子の定格が取扱説明書等に見当たりませんが、TL-922(stand-by端子の定格 DC100V、40mA)が接続できるとしていることから、それを優に超える定格があるものと推測されます。
(2014/12/18 追記)Kenwoodのrigsでlinear amplifier駆動に使用されている機械式relayはDS1E-M-DC12V(Panasonic, NAIS)で、定格は次の通りと分かりました。
 60W or 125VA
 DC 220V or AC 250V 
 3A 

半導体switchを使う方法

一方REMOTE connectorのRL(pin 7)には半導体switchを介してstand-byに連動して電圧が出るようになっています。
但し、上図のActive Low論理用のFETはTS-990だけに追加されており(MENUで切替可能)、TS-590や従来機種ではbipolar transistorによるActive High論理の出力しかありません。
従ってTS-990の場合は「Active Low」の設定(後述)にする事で送信時にpin 7をGNDに落とし、amplifiersを駆動する事が出来るようにも思えます。しかし問題は取扱説明書によると許容電流が10mAしかない事です。

よく使われている(solid state)linear amplifiersのstand-by端子の定格を調べてみると次のようでした。

 IC-PW1   DC 5V, 0.1A 
 JRL-2000F   DC 12V, 5mA 

つまり、JRL-2000FはOKと思いますが、
IC-PW1はTS-990のRL端子(pin 7、Active Low論理)からは直接駆動出来ない
ことになります。実際、IC-PW1の取扱説明書には次のように記載されています。
IC-PW1のACC端子の説明にはSEND端子の流出電流は「20mA以下」とも記載されていますが、それにしても10mAを超えますのでやはり直接接続は出来ないと考えた方が良いでしょう。

又、TS-990のActive Low論理の場合の耐圧はDC 15V迄という事ですので、後述の「リニアアンプ・コントロール設定」でTX Delayを加えた場合でも、TL-922等の真空管式amplifiersは駆動出来ません。

これはちょっと残念な話ですね。他社のexcitersの半導体stand-by端子の定格を調べてみると次の通りでした。

 IC-7600   250V, 200mA 
 FT-1000MP MkV   DC 40V, 150mA 

従ってこれらのexcitersからは、以下に述べる緩衝回路無しに、半導体switchから直接にIC-PW1、JRL-2000F等のamplifiersが駆動できます。(IC-7600は真空管式amplifierもstand-by出来ます。)

なお、JRL-3000F/TL-933のstand-by回路の定格は調べられませんでした。ですが、取扱説明書によるとTL-933はTS-590/990のRL端子から(Active High論理で)直接駆動できるとしていますので、流入電流定格は10mA以上あるものと思われます。


IC-PW1用緩衝回路入りLinear Amplifier制御cableの製作


以上の考察から、TS-990に内蔵の半導体switchを利用してIC-PW1を駆動するには緩衝回路が必要と判りました。「実際には10mAも電流は流れないだろうから直接繋いでも大丈夫じゃないか?」と言う人も居ますが、ICOM側が保証していない以上、TS-990の半導体switchを焼損してしまいたくはありません。
IC-PW1(2台)のSEND端子の流出電流を実測したところ、8.0~9.8mAでした。10mAは辛うじて超えていませんでしたが、定格10mAのTS-990のRL端子にはやはり繋がない方が良いでしょうね。(2014/6/14)
またTS-590の半導体switch回路には元より「Active High」の論理しかありませんから、論理を反転しない事にはSEND(TX GND)がGNDに落ちる事によって送信になるような通常のamplifiersを駆動できません。

そこで、2種類のcablesを作ってみたので報告します。緩衝回路により論理を反転し、exciter側は「Active High」の論理で動作するものです。どうせ作るのなら汎用性の高いcableにしておきたく、ALC制御線に加えて、通常の機械式relayによるstand-by線も一緒にDIN connectorに組み込むことにしました。IC-PW1だけでなく、どんなlinear amplifiersにも接続できるようにです。

Photo relayを用いる方法(高耐圧版)

TLP222GF(写真:秋月電子通商)
この版では東芝のTLP222Gというphoto relayを用いました(秋月電子通商で@110円)。出力側定格は350V、120mAと特に耐圧に余裕があります。他社にも同等品があるとは思いますが、通常のphoto couplersでは出力側の耐圧(50V程度)が低過ぎて、TL-922等stand-by端子に高圧(DC 100V)がかかるnon-QSKのtube linear amplifiersには使用できません。もちろん、IC-PW1の駆動にはphoto coupler程度でも問題ありませんが、どうせ作るなら高耐圧の物が良いですね。

Photo deviceにより完全に絶縁されているので、次に述べるtransistor版に比べてshack内の電波障害にやや有利ではありますが、部品点数の関係でDIN plug内部に回路を埋め込むのは難しいでしょう。

Digital Transistorを用いる方法(低耐圧版)

DTC124ESATP(写真:マルツパーツ館)

Open collectorのtransistor switchは無線ではCW/PTT/FSKのinterfaceにもよく使われていますが、何とbias抵抗がtransistorのpackageに埋め込まれたdigital transistorという便利なdeviceがある事をJA7UDE 大庭OMに教えて頂きました。

Digital transistorsにも各社の製品がありますが、digital回路用のためか入力耐圧が5~10V程度の物があって本用途には使用できません。筆者は、大庭OMに教えていただいたROHM社のDTC124ESAという物を用いました。入力側耐圧は-10~40Vと負電圧でもOKですし、出力側定格は50V、100mAですのでIC-PW1の駆動は問題無いでしょう。(ただし、さすがにTL-922は駆動できません。上の高耐圧版を用いるか、素直に機械式relayで駆動しましょう。)

このcableの利点は、部品がたった1個しか無いことです!Sizeは通常のTO92 packageのtransistorよりも少し小さい位ですので、余裕でDIN plug内に組み込め、smartなcableが作成できました。


Kenwood exciter側の設定


MENU設定だけですが、これがちょっとややこしいので解説しておきます。

TS-590の場合

上表(TS-590徹底解説集より)のように3つのON設定(1,2,3)があり、「リニア・アンプ制御(RL端子)」というのが半導体switchを指し、「リレー制御(COM/BRK/MKE端子)」というのが機械式relayを指しています。この辺の用語の使い方をもっと分かり易くして欲しいですね。
  • 機械式relayで制御する場合
    • 「2か3」の設定にします。そうしないとrelayがONになりません。
    • Solid stateのfull-QSKのamplifiersの場合は、「2でいいでしょう。
    • 真空管式(TL-922等)は遅延時間を取って、「3」にします。
  • 半導体switchで制御する場合
    • 1」にします。そうするとrelayの騒音から解放されます。
    • TL-922等遅延が必要なamplifiersを半導体switchで静穏に駆動する事は、そういう設定が無いので出来ません。もし「1」に遅延時間を加える設定があれば、photo relay版のcableを用いて出来たのですが、遅延時間を加えるには「3」を選ぶしかなく、そうするとRL端子(半導体switch)を用いて制御したとしても使わないのにrelay音が鳴ってしまいます。

TS-990の場合

 上表(TS-990徹底解説集より)のようにTS-590よりも設定の種類が2つ増えています。「Active High」「Active Low」という従来機種には無かった言い回しもあります。「RL出力」が半導体switchを指し、「リレー制御」が機械式relayを指しています。

結局の所、上の3つのON設定はTS-590の「1,2,3」に相当します。TS-590や従来機種はRL端子(pin 7)は「Active High」論理であって、TS-990になって初めてFET open drainによる「Active Low」論理が追加されたのです。(尚、遅延時間がTS-590では25msでしたが、TS-990ではSSB、FM、AMは45ms、それ以外[CW、FSK、PSK]では25msとなっています。)

この追加された「Active Low」論理というのは、機械式relayの動作を伴わず、送信時GNDに落ちるという事でまさしくlinear amplifierのSEND(TX GND)端子に直接接続するのに良いように思われますが、残念ながら上述のように許容電流が10mAであるため、この論理で直接IC-PW1を駆動することは出来ません
  • 機械式relayで制御する場合
    • 「Active High + Relay Control」か「Active High + Relay & TX Delay Ctrl」にします。そうしないとrelayがONになりません。
    • Solid stateのfull-QSKのamplifiersの場合は、「Active High + Relay Control」でいいでしょう。
    • 真空管式(TL-922等)は遅延時間を取って、「Active High + Relay & TX Delay Ctrl」にします。
    • ここでいう「Active High」は次の半導体switchの動作の事を指していますので、機械式relay動作の場合には何の意味もありません。機械式relay自体は言わばActive Low論理で動作するので、非常に紛らわしい表現だと筆者は思います。
  • 半導体switchで制御する場合
    • TL-933の場合は、専用cableで繋いで「Active High」にするそうです。(具体的回路は解りませんが、Active High論理で動作するinterfaceになっているのだと思います。)
    • 筆者製作の上記2種類のcablesはいずれも緩衝回路で論理が反転しますので、SEND(TX GND)がGNDに落ちる事によって送信状態となる通常のlinear amplifiersに接続する場合、「Active High」を選択します。これによりrelayの騒音から解放されます。
    • 但し、真空管式などnon-QSK amplifiersの場合は遅延が必要です。所が残念ながらTS-590の場合と同様の状況で、設定項目の問題で、このcableを使っても半導体switchを用いて遅延時間を付加して静穏にamplifierを駆動する事が出来ません。「Active High + TX Delay Control」(Relay無)という選択肢が無いのです。Active High論理で遅延時間を取るには「Active High + Relay & TX Delay Ctrl」を選択するしかなく、そうすると使わないのにrelay音がしてしまい、半導体switchで駆動する意味がありません。

2014年5月26日月曜日

CQ WPX CW @JG1ZUY

表題のcontestに房総丘陵のshackから参加した。

今回は、昨年から導入しているがまだ余り使いこなせていないmicro2Rを使ったSO2Rの練習を存分にする事にした。

WPX Contestの面白さ

DX Contestの王様と言ったら「CQ WW DX Contest」と言う事でほぼ異論は無いだろうと思う。季節的にもDXのbest seasonに鎮座し、参加局の多さ、rare multiを落とす事の楽しさと言ったら右に出る物は無い。

それに比べて「CQ WPX Contest」はやや地味なcontestだとずっと思っていた。しかしやってみるとこれはこれで面白い。
  • あらゆる面で平等。無数にあるprefixがmultiというのはある意味面白みが無さそうだが、WW DXのようにrare countryの局だけが特別呼ばれるということが無いのは却って公平で良い事とも言える。だから、このcontestに参加するために(呼ばれるために)わざわざCaribbeanとかAfricaに行く人も居ないわけである。
  • 「Number contest」の競争感覚。延々と同じexchange(zoneや年齢など)を送る他のcontestsと違い、いわゆるnumber contestsでは即時に成績を交換し合っているようなもので、これが競争感覚を煽って楽しい。Rivalsに勝っているか負けているかすぐに分るのである。負けていれば何とか差を詰めて、追い越したいと思う(なかなかそうはいかないが)。また番号が少しずつ増えていくというのも何ともaddictiveで射幸心(?)を煽るものだ。
  • Single op.の36時間制限は助かる。中高年の筆者は、48時間のcontestsは体力的にかなりしんどい。WW DXのように48時間single op.で無睡眠で戦うのは、sportsman並みのdie hardな体力が必要で、頭でっかちな戦略だけでは到底勝てない。
  • 国内交信が出来る。DXのCW/SSB contestsでは国内交信は得点にならない物が多い。RTTY contestsでは逆に国内交信も得点になるのが普通で、お世話になっている知人各局との「ご挨拶交信」もその楽しみの一部である。Contestだから、冗長なmessage交換は不要だが、有名contestersも自分を呼びに来てくれるのは中々良い気分だ。
  • Contestの基本技術を養う。このcontestはWW DXよりも初心者にお勧めしたいcontestだ。上記のruleが比較的平等である、国内交信が出来る等に加えて、number交換と言う基本的なcontest交信技術が磨かれる。SSBでもCWでもRTTYでもこれは基本技術だと思う。こう言うとなんだが、非常に基本的な交信練習に適したcontestである事は間違いない。
一方、悪い点を敢えて言うなら、SSBについては3月末と言うのはDX conditionとしては最高なんだけど、社会人としては年度末と言う最悪の時期で、いつもしんどい思いをして参加している。また、3月はmajor contestsが多過ぎる。新年のmajorは2月のARRL DX CWを皮切りに本格的なcontest seasonを迎えるが、3月は第1週のARRL DX SSBの後、第3週に今や「準major級」のRussian DXがあり、2月からずっとこれらに全力で参加しているとRussian DX辺りで「完全燃焼」してしまっていて、年によったらその翌週に来るWPX SSBはちょっと食傷気味になっているのである。

それに比べてWPX CWの方は5月末だから「暫く振りのmajor」という感じがして全力参加が出来る。また黒点上昇期はhigh bandsが夜遅くまで開く等夏型のconditionの始まりが楽しめるのも良い。

Sub antenna(TA-31@5.4mH)の設置

2 bands同時運用する都合上、sub antennaが必要な為、ナガラ TA-31(14/21/28 RDP)を仮設した。諸般の事情によりtower上に設置できなかったので、下図のように伸縮poleを用いてpanza mastに立てかけて5.4mHに設置した。
これでは低すぎて飛ばないし指向性も出ない(20mは1/4λ、15mは1/3λの高さ)かと思ったが、意外に飛んでくれて、昨年苦労して上げた釣竿vertical+ATUよりはよっぽど役に立った。

尚、rotaryではなく固定である。南北(0°/180°)に指向性が出るように設置する積りが、適当に作業したので偶然にも欧州向け(330°/150°)の設置角になった。この為欧州やZL方向(FW/FK等)から大変よく呼ばれnoiseも少なかったが、北米からはただの1局も呼ばれなかった。十分に指向性が出ていたとみられる。

申告score

                    CQWW WPX Contest, CW

Call: JG1VGX
Operator(s): JG1VGX
Station: JG1ZUY

Class: SOAB HP
QTH: Chiba
Operating Time (hrs): 35.5
Radios: SO2R

Summary:
 Band  QSOs
------------
  160:    0
   80:   35
   40:  193
   20:  547
   15:  870
   10:  142
------------
Total: 1787  Prefixes = 750  Total Score = 3,726,750

QTH: Kimitsu, Chiba (QM05bg)
Antennas:
- 3.5 trapped RDP
- 7/14/21 Create 714XX trapped tribander (3/5/5)
- 28 7L monobander
- 14/21 trapped DP (for sub)
Power: genuine legal 1kW
SO2R with micro2R
Logged by N1MM Logger 14.4.1
3830 reflectorへのpostはこちら

SO2Rでscoreを伸ばせると期待したにもかかわらず、結果的は非常に月並みな、というか悪い結果に終わってしまいました。その理由の分析と反省は以下にSO2Rの運用形態と関連付けて考えてみる事にします。

当日のcondition

Contest開始前に行った過年度のcondition分析は別postをご参照下さい。
(以下、画像はclickで拡大すると見易くなります)
地磁気はcontest開始前に磁気嵐が出てK=5まで上昇し、「2013、2011、2010年のようにまた磁気嵐の再来か!」と危惧しましたが、始まってみるとK<=2以下に推移してくれて、良好なconditionだったようです。

両日の太陽指数と、RBN spotsの欧州/北米方面の解析dataを示します。背景の濃い部分は筆者の休憩時間です。SSNは直前5/22に70まで落ちましたが、何とか底を打って上昇に転じてくれました。

1日目(5/24):SFI=118, SSN=130, A=4

2日目(5/25):SFI=113, SSN=133, A=4



筆者のtime chart

月曜日通常出勤を予定していた為、19z(月曜朝4時)には運用を中止して渋滞が起こらないうちにアクアラインを抜けて東京に戻る必要があった。従って最後の朝のoff timeを5~6時間と見て、あと6~7時間必要なoff timeを、土日それぞれ朝北米の終了する02z辺りから昼前後の3時間程度2日に分けて取る計画を立て、それ自体はうまく行ったと思う。

前週から睡眠不足気味であったものの、1日目の開始後2時間位で仮眠を2時間程度取る事が出来、起床してからは1日目の約21時間に亘る連続運用をこなす事が出来た。2日目はやや長めに昼の休憩を取り、起床してみたら10/15mが欧州迄開いていて慌てて運用再開したが、その後13時間を越える連続運用もそこそこ呼ばれたおかげで食事休憩を入れながら続ける事が出来た。

最終日の朝のoff timeは仕方が無いとして、昼前後に両日off timeを取った事は上のRBN dataと見比べると問題は無かったと思う。

SO2R練習の実際

1RではCQとS&Pしかないが、SO2RではCQとS&Pをどの様に組み合わせるかによって、様々な運用形式がある。

その中で今回は、最も疲労度の少ない「Dueling CQ」に限定して練習をする事にした。上にも書いたように月曜日は有給休暇を取っておらずfull timeで仕事があるし、前週も睡眠不足であったから36時間運用するためには疲労を最小限に食い止めたかった。

100% Running

S&PはCQに比べて疲労度が高い。ましてやnon-assistedだと、searchも自分でdialを回して既QSO局もtypeしてband mapにcallsignを残していかないといけない。これは大変に疲れる。またそもそもWPX Contestはmultiをわざわざ追いかけるほどの必要は無いのである(と思っていたのは実は間違いだった。WPXでもmultiを稼げばきっと得点増に繋がっただろう)。

というわけで、ただの1度もS&Pをしなかったのである。

98% Dueling CQ

また、練習なのでdueling CQにも拘った。普通rateが上がれば1Rの方が効率が良いと言われている。しかしrateが上がっても、両方から呼ばれても対処できるように、ずっと敢えてdueling CQを続けた。しかしpanicになり、せっかく呼んで頂いた局を困惑させたり、不必要に待たせたり、逃げられたりする事もあったので、終盤頃にはhigh rateの時に少しだけ1Rに切り替えた。それでも98%はdueling CQでやった。

SO2Rの利点

1Rであれば、2つ以上のbandsが開いている時間帯は、どちらのbandで運用するか迷う。

例えば夕方の15m欧州方面と40m北米方面はどうするのか?1Rでは10/15m欧州向けで行ったり来たり忙しく、40m北米方面を疎かにしてしまい易い。

しかし2Rなら、両方運用出来るから問題無い。3 bands以上開いている時は、2 bandsのうちrateの上がらない方のbandを3番目のbandに切り替える。そうやって順繰りにbandを入れ替えていく事により、常にrateの高い2 bandsで運用できるわけだ。

Dueling CQの場合、入れ替えたいと思っているrateの低いbandのCQを止めて、一時的にrateの高い方で1R Runningにする。その間CQを止めた側のrigでbandを切り替え、QSYしたbandで空き周波数を探す。見付かったら、dueling CQに戻して再開する。

両方から呼ばれてしまった時は・・・

Dueling CQをしていると、当然ながら両方から同時に呼ばれる時がある。交互にうまくexchangeを送ったりして捌けると良いのだが、まだまだ当局にはそんな事は出来ない。

実際には、片方は無視するか、お待ち頂く事になる。

この時の対策の為に、筆者はN1MM LoggerのF keyの1つに[AS]を仕込んでおいた。N1MM Loggerでは、Ctrl+Fxのように「Ctrl」keyを一緒に押す事で、TX focusの無い側のradioにF key macroを送信する事が出来る。

同時に呼ばれた時、優先した局と交信する合間にCtrl+Fxを押して反対側に[AS]を2回位送信するのである。合間というのは例えば、優先した局がexchangeをこちらに送っている間(こちらは聞いているだけで送信していない)である。Ctrl+Fxを押して反対側で送信しても、RX focusは移動しないのでexchangeを聞き逃すことは無い。

しかし、この方法で成功した(相手局が[AS]を理解し、待っていてくれた)のは1/3程度であった。残りの2/3は[AS]を?と聞き違えるのか更に何度も自分のcallsignを打ってきたり、そのまま居なくなってしまった。[AS]を打たれたからといって相手が待つ義理は何処にも無い。だから逃げられてもこちらは文句を言う筋合いでは無いのである。

[AS]を反対側に打つのは周波数防御にも使えた。非交信側で「QRL?」を打たれたり、それも無しにCQを始められた場合である。

Headphones振り分けについて

SO2Rを行う時、両方のradioをそれぞれ左右の耳でstereoで聞く人と、SO2R controllerのlatch機能を用いて状況により左右radioを交互にmonauralで聞く人が居るらしい。筆者はどちらかと言えば後者のtypeだ。

N1MM Logger / micro2Rではstereo/monoの切り替えに対応しており、日本語鍵盤では「@」keyで切り替えが出来る。詳細は過去記事を参照されたい。

Stereoで聞く事は、常に両bandsの状況が把握出来て周波数防衛にも有利である反面、非交信側の信号やnoiseが邪魔して、交信側が微弱信号の場合反復が増えて効率が低下する等の問題がある。WPX Contestの場合、片耳でexchangeを聞き取っている時に、非交信側で全く関係ない信号を打たれたりすると混乱する。

実際には、stereoを基本にするとしても、微弱信号時はmonoに切り替える等するのが良いと思った。「@」keyは日本語鍵盤では「Enter」の近くにあって、結構操作しやすかった。

やっていて疲れないのはmonauralの方である。Stereo受信に疲れた時はしばらくmonoに切り替えたりした。

Dueling CQの欠点

Runningする側には利点の方が多いと思うが、呼ぶ側からすると迷惑な面が多いのがSO2Rである。

先ほどの、Running局が他局と交信している間「待たされる」可能性がある点。

またdueling CQは反対側のbandで呼ばれた時、突然CQが中断される。これはS&Pしている側からすると迷惑な話だ。「TEST JG1VGT」などと符号の途中で途切れる場合もあるから、そこで呼んできたS&P局側にはcopy mistakeが生じてしまう。

敗因について

  • 1Rを中心に運用したと思われる他局とtime chartを比較すると、peak時間帯のrateの差が目立っていた。筆者が2Rやdueling CQに拘り過ぎた余り、rateがかなり影響を蒙ったようだ。
  • 「S&Pを一切しない」という方針を立てたため、runningでrateが落ちてくるとmain antennaでのrunning bandを頻繁に変更した(21->14、21->28等)。本来ならQSYではなく、S&Pを一回りしてくるなど、rateの一番高いbandに居座り続ける戦術が必要だったかもしれない。Contestを通してのmain bandである15mの局数が競合他局に比べて明らかに劣っていたのはこの為かと考えている。
  • 次回以降は2Rだけに拘らず、S&Pやhigh rate時の1Rへの切り替えなどを柔軟に組み合わせて雪辱を期したいと思う。

その他の感想

  • IF filterは300Hz位が適当だと感じた。結構運用局が詰まっていて、それ以上filterが広いと隣局が五月蝿い上に隣局を呼ぶ局を自局を呼んだものと誤解して交信してしまう。Tempoの良い交信だと、意外にtimingは合ってしまう。
  • 国内がskipするhigh bandsでは、空いていると思った周波数が実は他の強力な国内局が使っていて、上と同じような勘違い交信があった。Assistedならband mapを見てQSYするのでこういう事は余り起こらないが、non-assistedではある程度は止むを得ないものであろう。
  • BY局の躍進が目覚しい。HLやBVに比べてもcontest好きが多い様に感じられる。どんどん東亜細亜のcontest activityを高めてもらいたいものだ。

2014年5月23日金曜日

直前condition分析:CQ WPX CW

週末に迫ったCQ WPX CW contestに備えて、conditionの分析をしてみた。宇宙天気dataから得られた情報と、Reverse Beacon Networkの生spot dataViewProp(by ZL2HAM)で図示し、JAと欧州及び北米間のband毎のopen状況を調べたものである。

最近のdata

5/12~22の直近の太陽指数を調べると次の通り。残念ながら太陽活動は下降気味だ。
5/12
5/13
5/14
5/15
5/16
5/17
5/18
5/19
5/20
5/21 5/22
Avg
SFI
162 159 163 152 138 133 127 116 117 113 111 135
SSN
164 138 162 130 136 164 138 130 126 100 70 132
A
7 4 4 3 5 3 4 5 3 2 8 5

また、ここ数日で大きなflares、CMEは発生していないようだが、5/22~23にかけては軽い電子流の乱れや地磁気の乱れが観測されている。下記に述べるように何故かWPX CWは磁気嵐によく見舞われるので要注意だ。

さて上記のうち、週末に当たる5/17、5/18を除いた9日間のRBN spots dataを積算し示したのが次図である。図中10行あるうち上5行が欧州(10, 15, 20, 40, 80m)、下5行が北米(同左)のspot数である。(以下、clickすると図が拡大され見易くなります)
なおbarの高さは各大陸の最大値に合わせて正規化している。この為大陸内の各band間では高さで比較できるが、大陸間でbarの高さで比較はしないで欲しい。

この図を見て気が付く事は、
  • conditionの良かった2012年(下記)と比べて、朝の北米の開き方が悪い。
  • 10mには期待できない。(WPX contest ruleを考えると、期待しなくて良いが。)
尚これは5月中旬のdataであり、contest当日はこれよりやや夏寄りのpatternとなる筈だという事もご考慮頂きたい。

過去のdata

昨年以前のdataを見てみよう。まず「その年のcontest前日から終了までの3日間の地磁気data」を示し、その後に「contest 2日間のRBN data plot(欧州、北米方面)」を示す。

記憶が不確かだが、RBN本家serversがcontest中に過負荷でdownしたと思われる時間帯があった。下記に示したdataはこの点で欠落を含んでいる可能性がある事をご了承願いたい。

2013年

1日目(5/25):SFI=121, SSN=107, A=37
2日目(5/26):SFI=120, SSN=92, A=18
  • 1日目の終わりから2日目の最初にかけてRBN本家に過負荷による何らかのtroublesがあったものと推測している。
  • 個人的には、こちらのpageに書いてある通り、初めてu2Rを使ったSO2Rに挑戦したが、磁気嵐が出たり途中で東京まで数時間かけて忘れ物を取りに帰ったりと、散々な目に遭った年だった。
  • 10mのspotsが殆ど見られないが、これは磁気嵐の影響を受けて開いていなかったのか、WPX contestの特徴としてrateの高いbandsに運用が集中するためなのか?
  • 15mも磁気嵐の影響をかなり受けてopenが乏しかったようだ。20~40mは比較的影響が少なかったと見られる。

2012年

1日目(5/26):SFI=110, SSN=70, A=2
2日目(5/27):SFI=110, SSN=83, A=2
  • この年は非常に地磁気が静穏で、数々のrecord更新が生まれた(http://cqwpx.com/records.htmで検索できる)。今年もこういうcondxであってもらいたい!
  • main bandの15mは午後~早朝まで殆ど一日中欧州に開けている。
  • 10mがもっと開いていてもおかしくないが、spotsが少ないのは2013年の所にも書いたようにWPX contest ruleの影響か?

2011年

1日目(5/28):SFI=100, SSN=91, A=40
2日目(5/29):SFI=110, SSN=100, A=32
  • これまた酷い磁気嵐の年だったようだ。15mが振るわず20mがmain bandになっていたのは今見ると興味深い。
  • Skimmerの数は2012年以降と比べてまだ少なく、spotsの総数は半数程度で、graphが粗く見えるのはこの為だ。

2010年

この年以前はJAにskimmerの設置も少なく、RBN dataの数が不足しているため、宇宙天気dataのみ掲載する。
1日目(5/29):SFI=73, SSN=43, A=33
2日目(5/30):SFI=73, SSN=40, A=19
  • どうやらWPX CWは磁気嵐に当たる確率が随分と高いようだ。

2009年

1日目(5/30):SFI=68, SSN=0, A=3
2日目(5/31):SFI=68, SSN=15, A=3
  • この年は静穏だったように見えるが、まだ太陽活動の最低期のようだ。

2014年5月6日火曜日

micro2Rの接続と設定

microHAM社のスグレモノのSO2R controller、micro2R(以下u2Rと略)を買ってから大分経つが、接続~設定がやや難しいのと、contestsをやる機会が最近あまり無かったため、全然使いこなせないでいた。

先日のARI International DX Contestは珍しい3 modes (CW, SSB, RTTY)のcontestだったので、各modeでSO2Rを試す丁度良い機会だと本番でいろいろ実験してみたが、CW以外まともに動かせられなかった。

そこでcontest後になってしまったが、反省を込めて、大型連休を利用してManualに全部目を通し、接続・設定を再確認し、各modes一通り運用できるようにしたので、ここに備忘録として書き留めることにした。

結線図

電波形式によっては全てを結線しなくてよいので、配線を色分けしてみた。
  • PCとu2R間のUSB cable等、一部の配線は省略している。
  • これはradio 1台分の配線。実際にはもう1台のradioも同様に配線される。
  • の矢印は、信号の向きを示す。
    •  Radioへの入力、u2Rからの出力
    •  Radioからの出力、u2Rへの入力
  • ACC端子の「DIF-3 cable」というのは、筆者がTechnical ShackのDIF-3 Digital Interface用の接続cableを流用(改造)したものを使っているからで、DIN端子から必要な信号を取り出せればどんなcableであっても良い。

電波形式毎の運用


CW

一番簡単である。上図凡例の「ALL」と「CW」の配線を接続する。

ただしPTTを配線しないこの状態では、USB Device RouterでPTTをtriggerする設定をしても当然だがPTTは駆動されないので、rig本体のbreak-in機能を使うことになる。

Break-inだと高速CWでは少し符号の頭が途切れがちになる場合があるので、できればCWでもPTTは配線し、送受信をPTTで制御した方が良いだろう。PTTは8pin MIC端子か、背面のACC端子経由で配線する。

Paddle接続はお好みに応じて。

Voice (SSB)

CWとは異なり、音声系の配線が必要になる。上図凡例の「VOICE」を含む一連の配線を行う。

FOOTSWはあった方が便利でしょう。SEND→PTT INの配線はrig側からu2RにPTT信号を送るもので、u2Rの正しいVOX動作の為に必要になります。

Microphoneについて
  • Dynamic/Electret elementsの切り替えは本体内部のjumperで行います。Electretの場合、bias電圧をtip/ringのどちらに印加するか選択できます。
  • Electretの場合、mic端子が
    • 3.5mm monoの物(Heil iC等)は当然ですがtipに印加します。
    • 3.5mm stereoの物(通常のPC用multimedia headsets)はringに印加します。
      • (参考)PCのMIC IN端子はtipとringの両方に約2~3Vのbias電圧が出ています。

FSK (RTTY)

FSKだけならCWの次に配線が少なくて済みます。

USB audio codecを内蔵している最近のrigsの場合、受信音声はCATと同じUSB cable経由に出来ますので、後はFSKとPTT信号を配線するだけです。PTTは8pin MIC端子経由でも良いのですが、FSKと同じ背面のACC端子経由としてしまえば配線が1本減らせます。

MMTTY等のapplication内で受信音声(録音)を該当のUSB deviceに正しく設定します。
  • EXTFSKは使用しません。u2Rが正確なFSK信号を生成しますので、MMTTYの「PTT & FSK」では直接COM port(USB Device Routerで指定した物)を指定します。
  • 最近のN1MM Loggerでは、ConfigurerでDigital port(FSK送信 port)の設定が不要になり、MMTTY等のapplication内で設定する方式になったようです。(Configurerで設定しても動作に影響は無いようだが、無視されている?)

AFSK (PSK等)

基本的にはVoice用の配線と同じです。
  • 受信音声(録音)は、FSKと同様にUSB audio device経由にします。(出来ない場合は下記「USB audio codecを内蔵していないrigsの場合」を参照。)
  • 送信音声(再生)はUSB audio device経由には出来ません(*)。これは、u2Rでlevel調整などを行えるようにするためです。RigsのALC表示を見ながら、送信音が過変調にならないように前面のツマミで音声levelを調節します。(つまり送信音声はanalogとなります。)
MMVARIやN1MM Logger等の該当設定で、送信・受信音声deviceを正しく設定してください。送信(再生)はPC内蔵のsound card device、受信(録音)はUSB audio deviceないし下記LINE IN deviceとなると思います。

(*)と書きましたが、その後N1MM Logger/MMVARIを使用して、送信音声(再生)をUSB audio device経由にしても使える事が判りました。
  • N1MM LoggerのDigital Interface Windowの「Setup/Settings」→「MMVARI Setup」で「Output Soundcard(DI1/DI2)」をそれぞれのrigの内蔵USB audio codecにします。受信(Input Soundcard)と同じになるはずです。
  • 送受信音声ともUSB cableを経由しますので、u2RとPC間の「SC OUT←→PC PHONES」、「SC MIC←→PC MIC IN」の2本の配線、「u2R(DB9)→rigのMic端子(8p)」への音声配線は不要になります。
  • 送信focus(PTT)はN1MM LoggerとUSB Device Routerが制御してくれますが、rigへのPTTの送り方には複数の方法があります。
    • 1. 前面MIC端子または背面ACC端子経由で結線hardware PTT
      • u2R(USB Device Router)を介して制御します。このやり方が一番確実です。
    • 2. CAT commandsによるsoftware PTT
      • PC(N1MM Logger)からrigを直接制御します。
    • 3. Digital VOX
      • USB経由音声に対するrigのVOXです。
    • 後2者の方法では、以下のいずれかを行わないとu2RはPTT状態を検知できません。ですが検知できなくてもN1MM LoggerがrigsのPTT制御を直接行うので、SO2R運用自体に影響はないものと思われます。
      • PCからu2Rにhardware PTTを同時に出す。
      • rigのSEND→PTT IN(DB9)の結線をする。
  • 送信音声はu2Rを経由しませんので、前面のツマミで送信音量(変調の深さ)を調整することは出来ません。Rigsに内蔵されたUSBの音量調整機能を使って下さい。
(2014/5/21 追記)

USB audio codecを内蔵していないrigsの場合

FSK、AFSKの受信には、rig背面のACC端子のAF OUTからのanalog音声を用います。配線は下図の様に一部変更されます(右上の深緑色の部分)。
PCのMIC IN端子はmonauralであるうえUSB Device RouterのVoice録音機能により既に占有されていますので、stereoのLINE IN端子を用います。Laptop PCsには通常付いていませんので、安価な外付けUSB audio device(単なるMic端子付ではなく、LINE入力の付いているもの)を使いましょう。

また、ground loop noise対策として、isolation transformer等を挟む方が良いでしょう。

2014年4月9日水曜日

JIDX CW準備:県別希少度調査

今週末に迫ったJIDX CW Contestを前に、都道府県multiのrare度について調べてみた。

下表は昨年(2013)のJIDX CW Contestの結果よりQTHを総務省検索QRZ.com、各種blog等を参考に推定し、集計したものである。Log提出した366の国内局の都道府県別内訳、88,490総QSOの都道府県別内訳、それらの対全国比率%を示した。


なお数局はQTHを推定したが、大部分は合っていると思う。 但し4局だけはarea内移動(例:JQ5QQQ/5)でdatabaseから移動地をどうしても特定できなかった。(1、2、5、0 area各1局ずつ)

佐賀や福井が希少なのはわかるが、熊本からのQRVがzeroだった事には驚いた。全般に九州からは参加が少ない傾向があるようだ。

2014年2月22日土曜日

FTDI USB<->Serial(TTL)変換Cableを用いた、Kenwood TS-450/690/790/850/950用Rig Control Cableの製作

この時代のKenwoodのrig control interfaceは、背面のDIN 6pin connector(ACC1)にserial信号がTTL負論理で出ているという大変特殊なものである。

TS-950を使う機会があったので、秋月電子通商で入手できるFTDI USB<->Serial(TTL)変換Cable(税込み 1,340円)を用いて、rig control cableを自作してみることにした。秋月のこのFTDI USB cablesには5V品と3.3V品がありますが、今回使用するのは5V品です。間違えて3.3V品を買わないように・・・(もしかしたら動くかもしれないけど[未確認])。

DIN connectorは秋月では売ってませんので、隣の千石電商かマルツパーツ館等で入手しましょう。
なお、同じideaの物はeBay等で手頃な値段で販売されていますので、こうした完成品を買われても良いと思います。

製作の際には、TS-950SDXの取扱説明書(パソコンコントロールの頁、端子信号表がある)の他、こちらのKL7NAのpageが大変参考になりました。

作り方


秋月のFTDI USB<->TTL Cableのpin端子側をばらし、DIN connectorに配線します。GND、TxD、RxD、CTS、RTSの5本を配線し、FTDI Cable側のVCC 5Vはもちろん配線しません。

注意すべきなのは、TxDとRxD、CTSとRTSはstraight配線ではなくcrossさせることです。

なお、CTSとRTSは配線せず、Kenwood ACC1側のDIN connectorの4(CTS)と5(RTS)を短絡せさせておくだけでも動作します。(つまりこの場合GND、TxD、RxDの3本しか配線しません。)

次に、Kenwoodのrig control通信のTTL負論理に対応させる必要があります。これにはFTDI社提供(無料)のFT_PROGという専用toolを用いてcableに内蔵されているFT232R chipの信号論理を反転させます。EEPROM書き換えですが、特別な治具は不要です。

Download後、USB cableをPCに接続し、FT_PROGを起動します。
EEPROM tabのDevices > Scan and Parse (F5)でcableが認識されるはずです。(認識されないようなら先にFTDI USB cableのdriverをinstallしてください。)
上図のようにHardware Specific > Invert RS232 Signalsと辿り、TxD、RxD、RTS、CTSの4つの信号に反転のcheckを入れ、Devices > Program (Ctrl+P)を実行するだけです。

以上で完成です!!

FTDI USB<->TTL Cableの利点


USB Serial変換chipはFTDI(Glasgow, Scotland)の他、Prolific(台湾)、Silicon Labs(Texas, USA)等が有名所です。後2社の方がcost performanceは良いのですが、信頼性ではFTDIがピカ一のようです。

Prolificは安価なUSB Serial変換cablesによく採用され、人気のある秋月の900円のcableもこのchipですが、困ったことに中国製の偽造chipsが広く出回っています。Prolific社は最近のdriverでは識別対策を取るなどしており、またWindows 8でchipの古いversionには対応しないなど不便な点が出てきています。残念ですが秋月cableはHXAというこの古いversionに該当し(偽造chipではありません、念の為)、Windows 8では動作しなくなっています。(古いdriverなら動作する可能性がありますが、推奨できません。Windows Updateを行うと新しいdriverに上書きされるでしょう。)

FTDIはWindowsの全てのversionに対応していますので、このような心配もなく安心して使えます。

また本記事の応用例として、同じcableを用いてKenwoodだけではなくICOM CI-VやYaesuのTTL信号形式(FT-817/857/897等)用のcableも、同様に作成することが出来ると思います。

2014年2月1日土曜日

Buffalo外付けUSB HDDの修理

HD-CNU2シリーズ
3年以上使ったとは思うBuffaloの外付けUSB HDD(HD-CN1.5TU2)の調子が2~3週前から悪い。自動的に切断、再接続を繰り返す。そろそろ寿命かと思い急いで代替品を注文したが、届く前についにaccess出来なくなってしまった。まずい、まだback upしていない。

症状だが、HDD unitの電源を入れても、PCから全然認識出来ない。とにかくunitの故障なのかHDD本体の故障なのか、開筐して調べることにした。HDDが生きていたら、dataを吸い上げることが出来る。

そういえば、今回は特にHDD故障の時によくある異音は全くしていなかった。Unitの故障だといいのだが・・・・。

開筐はとても簡単で、筐体下面前方のネジ1本を外し、前面coverを外すだけ。Coverの上部は爪で固定されているだけ。後は左右coversを引き抜く。HDDはinchネジ2本で簡単に外れる。

まずHDDを取り外し、別のSATA-USB interfaceを付けてみた。今度は問題なくPCで認識できた。異音もしない。これでdata救済は成功だ。良かった。

ならunitの故障だろう。比較的スカスカの筐体の中にはinterface基板と電源基板しかないが、壊れるものといったら電源基板しかないだろう。
やはりだ。電源基板に超怪しげなcapsを発見。
液漏れしてるし、こりゃダメでしょうな。ちゃんと電源供給出来なくなって切断・再接続を繰り返していたわけだ。

容量・耐圧は2200μF 10Vと1000μF 16V、一応105℃品のようだ。部品を探さなくてはならないが、基板にぴたりsizeなので計測してみる。φ10mm☓20mm高である。交換用capsは直径が1mmでも大きいと入らない。

完全にぴたりではないが、秋月電子で同規格の物(ルビコン、国産品)が簡単に入手できた。高さが同じではないが、直径はφ10mmの物だ。部品代たったの110円也。

2日後、届いたので交換してみる。
少し背が高いのと低いのになったが、スカスカの筐体なので問題ない範囲である。

外したcapsは台湾Ltec(輝城電子股份有限公司)というmakerのLZG series。検索してみると液漏れで有名らしい。規格表によるとφ10mm品は寿命6,000時間だが、うちのPCは常時電源ONに近いから、それ位は確かに使ったかもしれない。しかし105℃で使っていた訳ではないから、やはりこのcaps、寿命は短すぎるよね。

筐体を組み戻したところ、問題なく動作した。成功だ。